アルツハイマー型認知症とは

物忘れのある女性の画像 医療と薬のはなし

 

概要

認知症とは、脳の神経細胞に変化が起こり、認知機能が低下して日常生活に支障をきたす病気です。

2022年に65歳以上の高齢者を対象に行われた調査では、認知症の方は約12%にのぼります。その中でも最も多いのがアルツハイマー型認知症で、全体の半数以上を占めます。

アルツハイマー型認知症は進行性の病気です。初期症状はもの忘れが目立ちますが、単なる加齢による物忘れとは異なります。

徐々に食事や歩行、排泄などの知的機能が低下し、最終的には日常生活を送ることが困難になる疾患です。

現在のところ根本的な治療法はなく、症状を緩和し進行を遅らせることが治療の目標です。

原因

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病によって引き起こされます。

脳内に蓄積したアミロイドβ蛋白、タウ蛋白が神経細胞を破壊し、脳の萎縮を引き起こすことが主な原因と考えられています。

脳のなかでも記憶を司る、海馬と呼ばれる部分から萎縮が始まることが多く、初期から記憶障害が目立つことが特徴です。

アミロイドβ蛋白は、蓄積が始まってから発症するまで20~30年を要すると考えられています。そのため、多くの場合10年以上かけて症状が進行します。

ほかの認知症に比べて、症状の進行は緩やかです。

症状

アルツハイマー型認知症の症状は中核症状と周辺症状(BPSD)に分けられます。

中核症状は脳の神経細胞の損傷によって起こる症状で、記憶障害が代表的です。初期にはもの忘れから始まり、新しい出来事が覚えられず、同じことを繰り返し訪ねたり、探し物が増えたりします。

進行すると、自分のいる場所や日時がわからなくなる見当識障害や、料理や入浴などの身の回りのことができなくなる実行機能障害も見られます。

一方、周辺症状(BPSD)は記憶障害に伴って現れる行動や精神症状の変化を表す言葉です。

例えば自分のものを盗まれたと感じる、もの盗られ妄想、怒りっぽくなって暴言を吐く、徘徊、不安、抑うつなどが見られます。

これらは本人だけでなく、家族や介護者にも大きな負担をもたらすため、適切な治療が必要です。

検査、診断方法

アルツハイマー型認知症が疑われる場合、まず本人や同居家族への問診を行い、生活状況や症状の経過を確認します。

その後、長谷川式簡易知能検査やミニメンタルステート検査などを行います。これらの検査は、認知機能の低下の程度を把握することが目的です。

認知機能の低下が認められた場合、CTやMRIなどの画像検査により脳の萎縮を確認します。

アルツハイマー型認知症では、海馬と呼ばれる部分が萎縮していることが一般的です。SPECT(脳血流シンチグラフィ)で脳の血流や代謝の異常を確認する場合もあります。

また、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症など、ほかに認知症を起こす病気を除外するための血液検査も行います。

治療法

現在、アルツハイマー型認知症を根本的に治す治療法はありません。治療の目標はできるだけ症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することです。

薬物治療としては、神経伝達物質であるアセチルコリンを増やすコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)や、過剰な神経興奮を抑えるNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が使用されます。

近年では脳に蓄積したアミロイドβ蛋白を減らす、抗アミロイド抗体(レカネマブ、ドナネマブ)も登場し、認知症の早期段階において進行を抑制する効果が期待されています。

ただし、使用には一定の条件があるので、全ての人が受けられる治療ではありません。

認知症の周辺症状に対しては、まずは運動療法や音楽療法などのリハビリテーションや、生活環境の調整を行い症状の緩和を目指します。

必要に応じて、対症療法として不安を和らげる抗不安薬や、抗うつ薬、睡眠薬などを使用します。いずれも根本的な治療ではなく、症状を緩和する治療です。

予防法

アルツハイマー型認知症の発症には、生活習慣が大きく関与しています。特に、中年期における糖尿病、高血圧、脂質異常症の管理が重要であり、喫煙もリスクを高める要因です。

定期的な運動習慣やバランスのよい食事、社会活動への参加、読書やボードゲームなどの知的活動は、脳に刺激を与え認知機能の低下を防ぐことが期待できます。

 

参考文献

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